Pâlir　青褪めた

　


　目の前一杯に紫が拡がっていた、青みも赤みも鮮やかな平均的なむらさき。
　紫の視界の中心には白く歪んだ円が浮かび上がって、その四方を同じ色のいなづまが取り囲んでいる。忙しくうごめきながら。
　私がそれを見ていたのはどうやらほんの一瞬ばかりのことで、ぽん、という音と共にすべてが崩壊した。
　私の乗っていた車が揺れる。
　揺さぶられる。
　私が乗っていたのは乗用車で、けれどそれは車ではなかった。
　座席がないのだ、そして走行に必要なありとあるもののすべてが。
　柔らかい毛皮とクッション、詰めこまれた日用品、缶詰、IKEAのビニル袋。それらが大きく後ろにかしぎ、私は車ごと転落する。
　今度はごごん、というすさまじい音がした。
　私はじたばたと手足をばたつかせ、できるだけ前のほうへ移動しようとする。夢中の叫び声。私は声を閉じこめておけずに口を開けて、フロントガラスを突き破った。

　オキゴンドウ
　2010.08.12
　全2P

　モール･ヴィヴァン
　2004.08.29
　全8P

　前回から数えて、殆ど一年振りの更新となってしまいました
　情けない限りです
　これも旧い話をサルベージしたもので、元はニールとトーと同じ冊子に所収されておりました
　物凄く山なしオチなし、です

　聖母
　2009.03.15
　全4P

　海辺の女
　2003.02.23
　全6P